佐賀県の島神集島神集島・万葉の碑
神集島
万葉集・巻第十五

肥前国松浦郡狛嶋(こましま)の亭(とまり)に舶泊てし夜、海浪を遥望け、各旅の心を慟(かなし)みてよめる歌七首

帰り来て 見むと思ひし我が屋戸の 秋萩すすき 散りにけむかも(秦田滿[はたのたまろ])
<都に帰って来て 見られると思っていた わが家の庭の 秋萩やススキは もう 散りはててしまったかも 新羅へ行き着かないうちに 年月ばかり過ぎて>

天地の 神を乞ひつつ 吾(あれ)待たむ 早来ませ君 待たば苦しも(娘子(をとめ)
<天地の神々に 無事をお祈りしながら わたしは待ちます  あなたが早く無事で お帰りになるように ただお待ちするのでは つらいだけなので 神々に無事をお祈りして わたしは待っています>

君を思ひ 吾(あ)が恋ひまくは あら玉の 立つ月ごとに 避(よ)くる日もあらじ
<あなたを想い ひたむきに恋い焦がれる気持ちは 月日がたつごとに いよいよ紛れることはありません>

秋の夜を 長みにかあらむ なそここば 眠(い)の寝らえぬも 独り寝(ぬ)ればか
<秋の夜の長さに堪えかねてか なぜもこんなに 目が醒えるのか ひとり寝が つづくからか 妻恋しい 秋の夜長はつづく>

たらし姫 御船泊てけむ 松浦の海 妹が待つべき 月は経につつ
<その昔 神功皇后の御船が泊ったという 松浦(まつら)の海で 船泊りは続いて妻に帰ると告げた月は いたづらに過ぎてゆく 妻の待つ想いをよそに 松浦(まつら)で船泊りは続く>

旅なれば 思ひ絶えても ありつれど 家にある妹し 思ひ悲(がな)しも
<旅なればと 思いあきらめてはきたけれど クニにある妻のことが 悲しく 心ふさぐ 旅の身の悲しさよ>

あしひきの 山飛び越ゆる 雁がねは 都に行かば 妹に逢ひて来(こ)ね
<雁がねは 飛んでゆく 山を越えて もし都に行くのなら わが妻に出会って 妻の便りを 運んできておくれ 山を越えてゆく雁がねよ 妻に伝えておくれ わたしは まめにしていると>

万葉集・現代語詩役(湊 徹彦 著)より

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